巴戦

相撲の同点決勝でも3力士が同じ勝ち星だと巴戦が行われる.それに対して弾さん,

と巴戦がアンフェアなことを問題としています.これは昔から私も思っていた.

実はこの巴戦、アンフェアであることがわかっている。


巴戦 - Wikipedia

確率から見ると○を引いた力士の優勝確率が4/14、他の2人は5/14である。


でも巴戦前にくじをしているから平等だという反論もある.
さらにその反論として弾さんはくじで試合前に「色をつけない」ことをフェアと考えた時の話だと説明している.

フェア、というのは、「色をつけない」、すなわち「試合前に条件を等しくする」ことだからだ。巴戦では、くじ引きまで含めた試合結果の平等は保てても、くじを引いた段階で試合に「色がついて」しまう。


上のエントリの主題は「フェアと和」を論じるところまで展開しているが,話を戻して,じゃあどうすればいいのかということをこのエントリの議題にしたいと思います.前提として相撲やサッカーのように1試合毎に2つの対象が勝ち負けを争うゲームで2以上の対象から1つの勝者を決める話を論じます.


大きく分けて4通りの決め方がある

  1. 100%フェアな方法で決める
    • 何らかの再試合を勝者が公平な手順で決まるまで続ける
  2. 100%くじで決める
    • 100%実力と関係ない
  3. 基準を細分化し無理やりにでも差別化して勝負を決める
    • バレーならセット率,得点率,アタック決定率など
    • 相撲なら勝利した取り組みで費やした時間が短かったものなどなど
      • これは時間稼ぎを防ぐために直接対決を時間算定の対象外にしないといけない?
    • サッカーでならコーナーキック数やボール保有率など
  4. 上記1., 2.. 3.の組み合わせ,ファジー
    • くじで巴戦の戦う順番を決めるのは1., 2.のファジー
    • 3.で良かった順に巴戦の有利な枠に入れる方法は1., 3.のファジー


もちろん,完全に1. ができればみんな文句はなく一番良いわけです.
そして1. を実現するには総当りか,階層化された総当りしかありません.
(トーナメントは2プレイヤーの総当りを階層化していると考える)


そしてもう一つの問題は,一人の優勝者が決まるまでの収束速度です.
一つの総当りがN人の場合は,N choose 2の試合数が必要.相撲ならまだしも,サッカーでもう一回総当りをするのは実行可能解としては絶望的など競技によって求められる速度は違います.
さらにその場合,3つ以上の対象の総当りではまた同点者が出て,有限回数で収束する保障がない.


そして階層化のどこかに3以上の素数の総当りがある限り,フェアな階層化もできないし,有限回数の収束も保障されないという行き詰まりになるわけです.そう最大の問題は(対象者の数が2の累乗でない場合に)上記の1. を有限回数で収束する方法論がないということだと思います.(特に予選(下の階層)を収束する手段でやらないと本選(最上位階層)をするときの疲労度が異なりフェアではない.またサッカーだと試合数が多い場合,イエローカードがたまりやすく不公平.)



そこで相撲の場合は4.を選択し,その一つとして巴戦に落ちるケースを残している.



巴戦も総当りと同様に有限回数の収束は保障されていません.しかし,巴戦が採用されているのは次の2点だと思います.

  • 総当りに比べて第一戦敗退者がアンフェアな利益を受けて有利になる代わりに,収束が早くなる
  • 2連勝した後に勝った相手ともう一回やるのは観客の感情的に受け入れづらい

ファジー化をどのようにどこまでするかは,フェアさと求められる収束速度で決まり,更に組み合わせを階層化する時には最終段階の疲れなどの公平性を近くする方法が検討され,相撲ではああいう妥協に落ちたのだと思います.