Re: ルールが一人歩きする

皆さんは赤信号を守りますか?
私はどんな状況でも「赤信号を例外なく守る人」は嫌いです.
特に歩行者や自転車の場合.


見通しの良い小さな道の横断歩道,通行する車が全くない場合は,私は赤信号でもたいてい渡ってしまいます.
私が大阪出身のせいかも知れません.
関東に来て「うどんがまずい」(ちょっと前までどこもまずかった)と並んで衝撃を受けた一つに「非常に無意味な信号でも守る」人が多いことがあります.
来てすぐの頃,友達と並んで自転車に乗ってた時の赤信号,私は一旦停止して渡ろうとしたのですが,友達は止まったままでした.幅4.5mの明らかに誰もいない道でさえも、、、
「渡ろうか?」
「いや」
「えっ,誰のために待ってるの?」
「いや,赤信号だから」
「・・・(誰のためにもならないのに守るのか???)」
そういう教育をされてんだなぁと思いました.他の人でも何度かそういう目にあいました.
信号は絶対的に守るためにあるのではなく,事故った時にどちらが悪いかを白黒つける判断基準である.そして我々は自分の責任の事故をなくす努力をしなければならない.それだけではなく,まわりに多少の違反者や自分と異なる判断基準をする人がいる可能性も考慮して安全側のマージンを持って判断しなければいけない.っという感じに思っていました.信号が青でも赤でも左右を見て確認をしなければならない,そして渡る判断は自分にあるのです.しかしその考えは(特に日本では)多くの人に受け入れられないようです.

  • 車の運転の場合は私でさえも信号を守ります.車は図体がでかく急な対処に弱いことと事故時はたいてい加害者側にまわると思っているからです.原付の場合も守ってることを考えると単に罰金が怖いだけかも知れません.自転車の場合は完全停止してまた動き出すのがめんどくさいだけかも知れません.


法律は大勢を束ねるために安全側に設定されます.しかし,それよって多くのロスを生んでいるのも確かです.信号のことだけを言ってるのではありません.法律があるから守るという短絡的なその思考回路はパブロフの犬のように強烈に刷り込まれている気がします.こういう人達はもし悪法でも「きまりだから」と守り続けるんだろうなぁと思います.そんな人たちの集合が,官僚や政治家のエゴイスティックな法律をすんなり受け入れてやったもん勝ちの政治,つまり愚民政治をはびこらしている.


これらの判断を法律による集中管理システムだけでなく,ロスをなくすためにより分散処理するためには,法律やきまりの意図を必ず説明がなされることが必要です.Informed consentに似てますね.そしてその場その場で判断し,もし判断できない場合はその場は法律を守るという対処をするべきだと思います.先に述べた見通しの良い道路の信号の場合は明らかにその法律の意図が分かり,判断もできる対象だと思います.

  • 時差信号,単純じゃない場合の方向指示付きの信号,5つ以上の辻など不確定要素の大きい場面では,幾つか判断をしなければ実行は難しいかも知れません.

更に法律の範囲内しか行動しない人も実は随所に判断をしなければならないタイミングがあります.例えば,横断歩道を青信号内で渡りきれるかを判断する時も渡る横断歩道の前半が右折車の邪魔になるか,後半が邪魔になるかのどちら側かによってその閾値が異なります.


もともと頭の中にあったこのエントリをやっとこさ書いたのは,融通の利かなさをなげく伊藤直也さんのエントリを見つけたのがきっかけです.問題意識は同じなのではないかと思いました.
伊藤直也,"ルールが一人歩きする",20051016

伊藤さんは法律を破る破らないという危ないことは言ってないのですが,共通していることは決まりが公布者の意図と施行者の運用にGapがあることから問題が起こっていることです.


また仕事上でも幾つか息苦しさを感じています.世の中の規則には,時代遅れのものもありますし,公布者の意向からして間違っている悪法も少なからずあります.一番多いのはその決まりを運用する仕事が与えられた人が,職人気質に仕事をまっとうしようとして自分たちの安全側(100%守らせる)に真剣に取り組むことにより,実際の意図とはかけ離れた実態をなすことだと思います.分散的な判断を許すと悪質な違反を管理できない問題もあるかも知れません.しかし,その時点では違反でも,正しい判断をしなければ悪法を変えるのが難しいのも事実です.


これらはビジネスモデルを考える時も同じです.インタネットによってビジネスモデルが変わってきて久しいです.ex.Longtailモデル,オープンソース
しかし旧ビジネスモデルでやってきた会社がその主流を変えるのは難しいです.
全ての古い習慣に対して抵抗するのは会社人生で生きにくなるでしょうが,少なくともどうしても変えなきゃならんことにはInnovatorになるべきだと思っています.