最近


私は典型的な日本企業に住んでいて,幾つか不満があります.


一つはDecisionライン.
私は医師が免許があり高給でもいいと思うのはリスクのあるものに決定を下す知識があるからです.
上司が高給や権限を持ってもいいと思うのはリスクのあるものに決定を下す知識があるからです.
これは求められるのは骨董品の目利きだけではなく,世の中の新しいものに対する目利きが必要です.

研究部門でも現実は,社内の事業部や社外の企業をお客さんとし,何をやりたいのか御用聞きをすることに注意を払っています.生きていくために,そして処世術として正しいのでしょう.
自らは決定をせず,世の中で人気が出て株が高くなったらやっと買うタイプを貫きます.
しかし私は,決断をしないインターン医師のような上司は嫌いです.


次にVisionaryでないこと.
研究部門といえでもビジョナリーなのは損なようです.リスクが高いものにトライするのではなく,半年1年ごとに着実に細かく設定したコミットメントを達成することが良しとされがちです.要は減点法です.
また

で愚痴を書きました.最近状況が変わってこれが私の案が内部で受け入れられそうなのですが,残念なのはやりたいからというより消去法なのですね.既存のものが苦しくなってきてから次を考えている.もともと何がやりたいか/何が必要かという視点ではない人が多い.


もう一つは,利益に対する意識の少なさ.
売り上げと利益は強い依存関係にあるのですが,意識として風土として大きなコンフリクトがあるように思います.企業ならば利益が必要です.しかし,それぞれの企業の意識は異なっていて次の3つのタイプがあります.

  1. 売り上げ重視
    • 売り上げ重視は日本企業では多いです.利益がでなくても大企業は偉い.雇用確保という面では私も偉いと思います.利益がでず内容もつまらない仕事でも売り上げが大きいものを優先して引き受ける.人数比例の工数ベースの仕事を好んで引き受ける感じです.安心できるからだと思います.
  2. 利益重視
    • 利益重視は売り上げ重視と利益率重視の間に位置すると思います.利益を上げる目標は利益率重視と同じです.しかし,利益率が高くて小さい仕事より,利益率が低くても大きい仕事を重要視します.商社などはこれだと思います.
  3. 利益率重視
    • キーエンスなどが徹底している感じですね.彼らは利益が出ていても利益率が低ければすぐに打ち切る.プロジェクトを利益率の高いものから順にソートして,高いものから順にナップサックに入れて実施する.

私は利益率重視を1流企業,利益重視を2流企業,売り上げ重視を3流企業と考えます.
企業の目的が利益を上げるために最適化することを考えると,従業員は数を増やしてまかなうための目的関数ではなく(売り上げ重視),従業員は資源でありその制約条件の中で最大限の利益を考える(利益率重視)のが当然だと思うからです.3流企業は一つのヒットプロジェクトがあると,その利益率の高いプロジェクトに人をつぎ込んでまかない,利益率を平均化して抑え,つまらないプロジェクトへ変えていきます.


投資関連の言葉ですが,私に言わせればこれは難平買い(なんぴんがい)です(逆の動作にも見えますが,意識レベルとして).高くなったら他に配分する.難平買いはリスクヘッジとして有効で,全体緩やかな成長している対象に使われる手法です.ただし,難平買いは足を引っ張るようなプロジェクトがあると全体が崩壊することと,パラダイムシフトのような大きな変化には付いていけません.研究組織のように何か変化を起こそうという所には不向きです.ただ頭を使わず決定を下さずシステマティックにできる戦略です.


難平買いは過去の結果をFeedbackしBalancingするもので,未来に対する何の判断もしていないのです.


先月,こんなことを考えている時に,梅田望夫さんのある講演を聞く機会がありました.かなり大雑把に私的に解釈すると,ベンチャ的な活動をどんどんしましょう!ということです.これはlegacyなプロジェクトと新しいプロジェクトのポートフォリオである種のBalancingなのですが,難平買いと違うのは過去のFeedbackによるものではなく未来への目利きに重点が置かれることです.賛成です.ただシリコンバレーとは違う企業風土では,提案されても案を見ず,世の中が高く認めるまで待つことが繰り返される所では難があります.そろそろ企業の中身を変えるか,自分の居場所を変えるかを考える分水嶺にあるように思います.